2013年5月30日木曜日

#14 ひとりぼっちの比良山縦走 その③:ビバーク

2013.4.28
前回までのあらすじ。日没が迫りくる中、一路宿泊予定地の金糞峠をめざしていたジャックランタン。 南比良峠の分かれ道が、大きく予定を狂わして行くことを知る由もなかった...。


南比良峠の到着時刻は17時過ぎ。やばい。急がないと日が暮れてしまう時間だ。南比良峠の道案内は理路整然としていた。左右どちらの道でも金糞峠に行けるが、左は大橋経由で所要時間が30分程、余計にかかる。ここは計画通り右の道でまっすぐ金糞峠を目指す。(追記2013.7.26 先日現場検証してきましたが、根本的に右に行くのは間違いです。大橋経由金糞峠の分岐は、また別にありました。詳細は後々ブログに掲載したいと思いますが、山シーズン到来で当ブログを参考にされている方が多数いらっしゃるようですので、先に注意喚起させて頂きます。)


するとどうだ。3分も経たないうちに大きな崖にぶつかる。道らしき道も見当たらない。地滑りで道が無くなったか、はたまた俺が道を見つけられないだけか。取りあえず、GPSで位置を確認して、それらしいところを回り道する。


が、一向にそれらしき道が見つからない。相変わらずGPSでは道を大きく外れていないので、自分を信じて歩き続ける。ただ、この時点でGPS(iphone)のバッテリー残量はあと僅か。予備バッテリーがあるとはいえ、明日もあるので無駄使いは出来ない。胸のざわざわは大きくなって行く。

                                                     
こんな写真ではあまり伝わらないが、結構な斜度。木を捕まって出ないと到底登れない。この時点で、登山道探すのを諦めて堂満岳山頂まで登って尾根沿いをあるくかどうかで迷い出す。しかし、あちこちで立ち枯れした木が倒れていて足下が悪く、尚かつ斜度がきついので山頂行きは諦める。当初の登山道を探しつつ、斜面をトラバースして先に進む。


進む道を木の枝が行く手を阻む。ずっとこんな感じ。新芽が出てなくて詰まらない山やなと思っていたけど、葉が付いてなくて不幸中の幸いだ。この木々が青々と葉が付いていたら視界が遮られ、どえらいことになってたやろな。ここでも斜度がよく伝わらないが、両手は必ず木をつかみ、まさに全身で山に喰らいつく。


やっと登山道らしきところに出て、ほっとするも束の間。淡い期待は絶望に変わる。地図にこんな道のってない...。それでも、この道を行けば間違いなく尾根に出るはずだ。


が、しかし!落ち葉がすごい。山でよく見かける、雨の通り道になって両端が高くなっているタイプの道なのだが、落ち葉が1メートル位積もっている。ストックで深さを探るとグリップ下まで埋もれている。急斜面で落ち葉相手にラッセル。正直アリ地獄と同じで、もがけばもがく程、体力を消耗して行く。本当に泳ぐように全身を使っての山登りなど、初めての体験だ。しかも15kgの大型バックパック背負って。

後に分かったことだが、この道は予定していたルートと堂満岳を結ぶ登山道で、2012年度の山と高原地図には記載されていました。ただ、200mにも満たない距離なのに所要時間が40分かかると記載されていた。通常でも相当険しい道のようです。


 再三になりますが、斜度分かってもらえるでしょうか。落ち葉地獄は結局前に進めず。諦めて結局当初のルートを求めて、死にものぐるいで凹んだ道から脱出するもいよいよ日没。「あの尾根さえ越えれば、きっと道が開けるはず...。」なんて、自分を励ますも体力の限界。左足が引きつり始めた。これは、もう潮時かな。ビバークも視野に入れ始めたそのとき、眼下には急斜面の中にも関わらず、6畳程のフラットな場所を見つける。しゃーない、今日はあそこで一晩過ごすか。


初めてのテント泊なのに、なんでこんなアドベンチャーやねん!と心の中でぶつぶつ呟くが、この時点で18時30分。いそげー、早やくしんと真っ暗になってしまう。なんとか設営できたけど、ほんとうにジャストサイズ。テント後ろはすぐ斜面。上手いこと立ち枯れの木の間にテントが収まってくれた。


取りあえずテント場に付いたら、トマト(嫁)に連絡することになっていたのだが、なんて言おう。「遭難した」なんて言ったら、心配するやろな。っていうか、これは遭難なのか。遭難は一体どこからが遭難なのか。なんてことを考えても仕方が無いので、「順調です。ただ今夜は予定地と違うところで寝るわ」とだけメールした。僕なりの精一杯の意地と優しさだ。兎に角泣き言を言っても始まらないので、食べるものはしっかり食べる。この日の夕食は野菜入り棒ラーメンに、ソーセージと裂けるチーズ。


この日の為に、コンビニで探しまわったプラスチックケース入りのウィスキー。本当だったら、満面の笑顔で「ワイルドだろ〜」ってFacebookにアップするつもりだったのに、そんな余裕は無くなってしまった。っていうか、そんなことをする携帯のバッテリーも勿体ない。明日になれば、事態は好転する。山の向こうはすぐに登山道に決まってるさ、と自分で自分を納得させて、早々に寝袋に包まり、長い一日は終わった。
(次回その④に続く)






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